書くだけ書いて、

かわなべひろき、石井宏樹、島崎清大、鹿児島のソングライター3人による雑文集

台所 ーかわなべひろきー

かつて日本には「男子台所に入るべからず」という時代があったそうな。今となっては考えられない。むしろ多くの女性が「なんならもっと入ってこいや」と男性の積極的な台所仕事への参加を欲しているのでは。

僕の1日には台所で過ごす時間が必ずある。嫌いじゃない、てか、むしろ好きだよ台所。先の時代に生まれなくて神様テンキュ。つまり「台所が好きな僕」は、そこそこの「ダイドコラー」と言える。

 

ダイドコラーとしての自分の始まりを思い返してみる。あれは20代も黄昏てきた頃、自分しか食べる人がいない夕飯を作っていたとき。いつものように、お野菜トントンお肉をジュージュー、たまにつまんで味見をチョチョイ。

かわなべひろき調べによれば、一人暮らしの男の自炊において「焼きそば」の出現率の高さと言えば、ギャルにおけるダメージヘアの出現率と同じで、言ってしまえば「ほぼ」である。
ほぼ毎晩のように、焼きそば。塩にするかソースにするかだけが、生きる選択肢。このセオリーに漏れることなく、僕の夕飯の焼きそば率の高さたるやだったんだけど、この日いつもと1つだけ違うことがあった。それは、「ビールを飲みながら作っていた」ということ。

 

それが、ダイドコラーとしての自我が芽生えた夜だった。料理における「ただ作る」と「ビールを飲みながら作る」この2つの間に隔たる壁の高さたるや。ビールやりながらつまみ食いしてほろ酔い気分て、サイコーよ。

「ビール」が料理を作ることそれ自体を、こんなにも愉快に彩ってくれるとは盲点だった僕。そのことを当時の仕事先の同僚に話すと、世間的にはこれを「キッチンドランカー」とか、「キッチンドリンカー」とか呼んでおり、それなりに市民権を得ている呼び方なんだと。僕が無知なだけだったみたい。

 

試しにこの呼称を検索してみると「アルコール依存性の主婦」と出てきてスマホをぶん投げそうになった。だれがアル中の主婦やコラ、と。アル中でもなければ主婦でもない僕は断じて「キッチンドランカー」などではない!

あれから数年。今や呼び方なんてそんなことはどうでもよく、毎日とは言わずも、休日の夕方や思い立ったとき、時計も見ずにビール(もちろん第3のビールな)片手の料理の時間。

台所がそれなりに好きな僕はダイドコラー。

 

今日はこの辺で…。


かわなべひろき
(1983うまれ  美容師、在宅系音楽家、セルフ朝礼家)
Twitter https://twitter.com/kawanabehiroki
ブログ http://kawanabehiroki.hatenablog.com/
音楽 https://m.soundcloud.com/kawanabehiroki

勤務先美容室 https://mekashiya.amebaownd.com/